更新の前に用意する3つのもの
ファームウェアは、カメラやレンズの中で動いている制御ソフトです。更新すると、不具合の修正、AF性能の改善、新しいレンズへの対応などが加わります。作業は難しくありません。ただし、準備を省くと失敗しやすくなります。最初に次の3つを用意してください。
1つ目は満充電のバッテリーです。更新中に電源が切れると、カメラが起動しなくなるおそれがあります。残量が十分でないと更新を始められない機種も多いため、充電を済ませてから始めます。
2つ目はカメラでフォーマットしたメモリーカードです。フォーマットとはカードの中身を消して初期化する操作で、PCで初期化するよりもカメラで行うほうが認識の失敗が減ります。保存されている写真はすべて消えるので、先にPCへ取り込んでおきます。
3つ目は正確な機種名です。名前の似た機種は多く、ファームウェアは機種ごとに別のファイルです。本体の刻印、ボックス、取扱説明書で型番を確かめてください。レンズも焦点距離やF値、世代を示す記号(II、IIIなど)まで一致させます。
つまずきやすい箇所は、ファイルを置く場所、更新中の電源、更新後の設定の3つです。いずれも後半の節で対処法を説明します。
手順1:現在のバージョンを確認する
まず、カメラが今どのバージョンで動いているかを調べます。メニューの「設定」や「セットアップ」の中に「ファームウェア」や「バージョン情報」といった項目があります。項目名とメニュー内の位置は、メーカーや機種で異なります。見つからなければ取扱説明書で「ファームウェア」を探してください。
レンズのバージョンは、多くの機種でレンズを装着した状態の同じ画面に、本体と並んで表示されます。ここで確認した番号を控えておきます。メーカーサイトに載っている最新版と同じであれば、更新は不要です。
手順2:メーカーサイトから正しいファイルを入手する
ファイルは必ずメーカーの公式サイトから入手します。サポートページの「ダウンロード」や「ファームウェア」の欄で、機種名を選んで探します。
ダウンロードの前に、更新内容の説明(リリースノート)を読みます。ここには修正点のほか、更新の条件が書かれています。たとえば「特定のバージョン以降からのみ更新できる」「本体を先に更新してからレンズを更新する」といった順序の指定です。指定がある場合は、その順番を守ります。
配布ファイルは、Windows用とMac用で形式が分かれていることがあります。どちらも、展開すると中身は同じ更新ファイルになるのが一般的です。使っているPCに合わせて選んでください。
なお、多くの機種では一度更新すると旧バージョンに戻せません。新しいバージョンで困る変更がないか、リリースノートで確かめてから進めます。
手順3:PCでカードにファイルを書き込む
ダウンロードしたファイルがZIPなどの圧縮ファイルなら、先に展開します。展開すると、拡張子(ファイル名の末尾の「.BIN」「.FIR」など)の付いた更新ファイルが現れます。
カメラでフォーマットしたカードをPCに挿し、更新ファイルをカードの一番上の階層(ルート)にコピーします。写真が入る「DCIM」フォルダの中には入れません。圧縮ファイルのままコピーしたり、ファイル名を変えたりしてもカメラは認識しません。
コピーが終わったら、PC側で取り出し操作をしてからカードを抜きます。取り出し操作をせずに抜くと、書き込みが終わっていない場合があります。
メーカーや機種によっては、カードを使わずにPCとカメラをUSBケーブルでつなぎ、専用ソフトで更新する方式もあります。この場合は、公式サイトで配布されている手順書どおりに進めてください。
手順3の別ルート:スマホアプリで更新する
メーカー純正のスマホアプリには、ファームウェア更新に対応したものがあります。アプリがファイルをダウンロードし、Wi-FiやBluetoothでカメラへ送る仕組みです。PCが手元にないときに便利です。
使えるかどうかは機種で決まります。アプリの対応機種一覧と、アプリ自体のバージョンを先に確認します。転送には時間がかかるため、スマホも十分に充電し、転送中はアプリを閉じないでください。転送が終わると、多くの場合はカメラ側で更新の実行を求められます。ここから先の流れは次の手順4と同じです。
手順4:カメラで更新を実行する
カードをカメラに入れ、電源を入れます。手順1で開いたバージョン表示の画面に戻ると、更新を実行する項目が選べるようになっています。選ぶと、新旧のバージョン番号を示す確認画面が出ます。番号が正しければ実行します。
更新中は画面に進捗が表示されます。所要時間は数分程度が目安ですが、機種によってはもっとかかります。この間は電源スイッチに触れず、バッテリーやカード、レンズを外さないでください。完了の表示が出たら指示に従って電源を入れ直し、バージョン番号が新しくなったことを確認します。
レンズを更新する場合は、レンズを本体に装着した状態で同じ操作をします。マウントアダプタ経由では更新できない組み合わせがあります。メーカーが指定する装着方法で行ってください。シグマやタムロンなどのレンズは、専用のUSBドックやレンズ本体のUSB端子をPCにつなぎ、専用ソフトで更新するものがあります。各社の対応表で方法を確認してください。
うまくいかないときの対処と戻し方
更新項目が出ない、ファイルが認識されない
最も多い原因は、ファイルを置く場所です。カードをPCに戻し、更新ファイルがルートにあるか確かめます。同じファイルを2回ダウンロードすると、名前に「(1)」が付くことがあります。この場合は元のファイル名に戻してください。圧縮ファイルの展開を忘れていないか、別の機種用のファイルではないかも確認します。直らなければ、カードをカメラでフォーマットし直し、ファイルを書き込む手順からやり直します。
更新中に電源が切れた
まず、満充電のバッテリーを入れて電源を入れ直します。多くの場合は起動するか、もう一度更新を求める画面が出ます。この場合は同じ手順で更新をやり直せば元に戻ります。電源が入らない、または画面が表示されない場合は、何度も試さずにメーカーのサービス窓口へ相談してください。分解や非公式な修復ツールは症状を悪化させます。
更新後に設定が初期化された
更新の内容によっては、メニューやボタン割り当てが初期値に戻ります。これに備えて、更新前に設定をカードへ保存しておきます。多くの機種には設定の保存と読み込みの機能があります。保存したファイルは、更新ファイルとは別のカードかPCに控えておきます。更新後に読み込めば、元の設定に戻せます。ただし、バージョンが違うと読み込めない場合もあります。重要な設定はメニュー画面をスマホで撮影しておくと、手で戻すときに迷いません。
次に更新するときの判断基準
更新は、出るたびに急いで入れる必要はありません。自分が使う機能に関係する修正があるか、新しく買ったレンズに必要かを、リリースノートで判断します。撮影の予定が近いときは避け、時間に余裕がある日に行います。まずは手順1で、自分のカメラとレンズのバージョンを確かめてください。最新版と違っていれば、リリースノートを読むところから始めます。