何を重視するかでセンサーサイズが決まる
最優先する点を一つ決めると、選ぶべきフォーマットはほぼ絞れます。暗い場所での画質と背景のボケを最優先するならフルサイズです。画質と携帯性と予算のバランスを取るならAPS-Cです。望遠の届きやすさと機材の軽さを最優先するならマイクロフォーサーズ(以下MFT)が候補になります。
フルサイズのセンサーは約36×24mmです。APS-Cの面積はフルサイズの4割強、MFT(約17.3×13mm)は約4分の1です。以下の6観点での有利不利は、ほとんどがこの面積の差から生まれます。
| 観点 | フルサイズ | APS-C | MFT |
|---|---|---|---|
| 高感度・ダイナミックレンジ | 最も有利 | 中間 | 不利 |
| ボケの作りやすさ | 最も容易 | 中間 | 難しい |
| 大きさ・重さ | 重い | 中間 | 最も軽い |
| レンズの選択肢 | 最も多い | マウントによる | 2社のレンズを共用できる |
| 望遠 | 重く高価になる | 有利 | 最も有利 |
| 動画 | 暗所とボケに強い | バランス型 | 手ブレ補正と機動力に強い |
6つの観点で比較する
画質:高感度ノイズとダイナミックレンジ
同じ世代のセンサーを同じサイズの写真で比べると、センサーが大きいほど有利です。受け取る光の総量が多いからです。目安として、高感度ノイズではフルサイズがAPS-Cより約1段強、MFTより約2段有利です。ISO感度(センサーの信号を増幅する度合い)を上げる夜の室内や夜景で差が出ます。ダイナミックレンジ(明るい部分から暗い部分までを同時に記録できる幅)も、高感度になるほど差が開きます。
晴れた屋外で低感度で撮るなら、3つの差は小さくなります。A4程度のプリントやスマートフォンでの閲覧では、MFTでも不足を感じにくいでしょう。新しい世代のセンサーが古い大型センサーを上回ることもあります。
ボケの作りやすさ
同じ画角と同じF値で撮ると、センサーが大きいほど被写界深度(ピントが合って見える範囲)が浅くなります。フルサイズのF2.8に近いボケを得るには、APS-CでF1.8前後、MFTでF1.4前後が必要です。逆に、風景や集合写真のように手前から奥までピントを合わせたい場面ではMFTが有利です。あまり絞らずに済むので、シャッター速度を稼げます。
本体とレンズの大きさと重さ
差が大きいのはボディよりもレンズです。フルサイズの24-70mm F2.8クラスは700g前後から900g台の製品が多くあります。MFTで同じ画角になる12-40mm F2.8クラスは400g前後に収まります。ただし最近のフルサイズには、小型ボディや軽いF4ズーム、小さな単焦点も増えました。組み合わせによってはAPS-Cとの差がかなり縮まります。比べるときはボディ単体ではなく、持ち歩くレンズまで含めた総重量で比べてください。
レンズの選択肢と価格
フルサイズは純正レンズに加えてサードパーティ製も多く、選択肢が最も広いフォーマットです。そのぶん大口径レンズは高価になりがちです。MFTは、OM SYSTEM(旧オリンパス)とパナソニックが同じマウント規格を使っており、両社のレンズを互いに装着できます。ただし、レンズとボディの手ブレ補正を協調させる機能などは、メーカーが違うと働かない場合があります。APS-Cはマウントごとに事情が大きく違います。富士フイルムXマウントとソニーEマウントはAPS-C用レンズが充実しています。キヤノンRFマウントのRF-SレンズとニコンZマウントのDXレンズは、執筆時点で本数が限られます。そのため、フルサイズ用レンズを流用する場面が多くなります。
装着できるかどうかは特に注意してください。ソニーE、キヤノンRF、ニコンZには、同じマウントでフルサイズ機とAPS-C機があります。フルサイズ用レンズはAPS-C機にそのまま付き、画角が狭くなります。APS-C用レンズをフルサイズ機に付けると、多くの機種では自動でクロップ(画面の中央部分だけを使う)され、画素数が減ります。ただし対応状況は機種ごとに違います。MFT用レンズはEマウントやRFマウントのボディには付きません。富士フイルムのXマウントとGFXマウントも別の規格で、互換性はありません。マウントアダプター経由では、AFや手ブレ補正が動かない、または遅い組み合わせがあります。購入前にメーカーの対応表で確認してください。
望遠の有利不利
同じ焦点距離のレンズでも、センサーが小さいほど写る範囲が狭くなります。つまり望遠側で有利です。フルサイズ換算の焦点距離は、APS-Cで約1.5倍(キヤノンは約1.6倍)、MFTで2倍になります。MFTの100-400mmクラスのズームは換算200-800mm相当で、フルサイズで同じ画角を得る機材よりはるかに小さく軽くなります。換算焦点距離の計算方法は別記事で詳しく解説しています。フルサイズ機でもクロップ機能を使えば望遠側を伸ばせます。ただし使う画素が減るので、高画素機でないと後からトリミングする余裕が小さくなります。
動画適性
フルサイズは暗い場所に強く、背景を浅くぼかした映像を作りやすいフォーマットです。一方で、本体の発熱や、4Kの高フレームレートで画面がクロップされる機種がある点には注意が必要です。APS-Cは機材が小さく、ジンバル(電動スタビライザー)にも載せやすいのが利点です。MFTはボディ内手ブレ補正が強力な機種が多く、歩きながらの撮影に向きます。被写界深度が深いのでピントを外しにくいのも利点です。
各フォーマットの弱点
フルサイズの弱点は、重さと価格です。特に望遠をそろえると、重量も費用も急に増えます。手前から奥までピントを合わせるために絞ると、そのぶんISO感度を上げる必要があります。
APS-Cは中間のフォーマットなので、際立った強みが出にくい点が弱点です。暗所性能とボケではフルサイズに及ばず、望遠の軽さではMFTに及びません。マウントによっては、APS-C専用の明るい広角単焦点がほとんどありません。
MFTの弱点は、高感度ノイズと背景のボケにくさです。主流の画素数は2000万〜2500万画素前後で、大きくトリミングする使い方には向きません。ボディとレンズを出しているのは実質2社なので、ボディの選択肢も限られます。
用途別・予算別に向くフォーマット
旅行
一日中持ち歩くので、MFTかAPS-Cが向きます。旅先で夜の街や室内を手持ちで撮ることが多いなら、小型のフルサイズボディと軽い単焦点の組み合わせも候補になります。
子ども
屋外の遊びが中心なら、軽くて扱いやすいAPS-Cで十分です。体育館や室内の発表会では、速いシャッターと高いISO感度が必要になります。こうした場面が多いならフルサイズが有利です。
野鳥
換算800mm前後を手持ちで扱えるMFTが最も有利です。APS-Cも有力です。フルサイズに大型の超望遠レンズを組み合わせる方法は、暗い林の中では画質面で強みがあります。ただし重さと費用の負担は大きくなります。
夜景
三脚を使えば低感度で撮れるので、フォーマットによる差は縮まります。手持ちの夜景や星空ではフルサイズが有利です。MFTでも、強力な手ブレ補正を活かせば手持ちで遅めのシャッターを使えます。
ポートレート
背景のボケを重視するならフルサイズです。APS-CでもF1.4クラスの単焦点を使えば十分にぼかせます。MFTでフルサイズに近いボケを狙うにはF1.2クラスのレンズが必要で、価格と重さが増えます。
予算で考える
入門向けのレンズキットは、APS-CとMFTの方が安く始めやすい傾向があります。フルサイズにも比較的手頃なボディはあります。ただしレンズを買い足すと総額の差が開きます。予算はボディだけでなく、2〜3年で買うレンズまで含めて見積もってください。価格は変動するので、執筆時点の傾向として受け取り、最新の価格は販売店で確認してください。
購入前に確かめること
まず、撮りたい場面のうち最も条件が厳しいものを一つ選びます。暗い室内、遠くの被写体、長時間の持ち歩きのどれかです。その条件が、フォーマットを決める判断材料になります。次に、候補のマウントで欲しいレンズが実在するか、ボディとの組み合わせで装着と機能が保証されているかを、メーカーの公式情報で確認します。最後に店頭で、ボディと実際に使うレンズを付けた状態で持ち、重さが許容できるかを確かめてから決めてください。