露出は三つの数値の掛け合わせで決まる

写真の明るさは、絞り・シャッタースピード・ISO感度の三つで決まる。絞りはレンズが通す光の量、シャッタースピードは光を受ける時間の長さ、ISO感度は受け取った光を増幅する度合いを指す。水道にたとえると、絞りは蛇口の開き具合、シャッタースピードは開けている時間、ISO感度は少ない水を「これで一杯とみなす」目盛りの読み替えにあたる。同じ明るさになる組み合わせは無数にあり、どれを選んでも露出だけは同じになる。

初心者がつまずくのは、この「同じ明るさ」の裏で写真の中身が別物になるからだ。絞りはボケの大きさを、シャッタースピードはブレを、ISO感度はノイズを同時に動かす。三つの要素を覚える目的は明るさを合わせることではなく、明るさを保ったまま狙った効果を選ぶことにある。

絞りは明るさとボケの大きさを同時に動かす

絞りはF値で表す。F値が小さいほどレンズの開口が大きく、光をたくさん通す。F1.8はF4よりかなり明るい。同時に、ピントが合って見える範囲(被写界深度)が浅くなり、背景が大きくボケる。人物写真の背景が溶けるように写るのは、開放付近のF値で撮っているからだ。逆にF8やF11まで絞ると、手前から奥までピントが合った状態に近づく。風景や建物、料理を全体的に見せたいときはこちら側を使う。

ボケ量が絞りだけで決まらない点は押さえておきたい。焦点距離が長いほど、被写体に近づくほど、背景が遠いほど、そしてセンサーが大きいほどボケは大きくなる。同じF2.8でも、望遠で寄って撮ればよくボケ、広角で引けばあまりボケない。

絞りすぎにも注意がいる。開口が小さくなると光の回折が目立ち、解像がわずかに落ちる。多くのレンズはF5.6からF8前後が最もシャープで、センサーが小さい機種ほど早い段階で影響が出る。F16以上は、手前から奥まで確実にピントを乗せたいときや、明るい場所であえてシャッタースピードを落としたいときに限って使えばよい。

シャッタースピードはブレを止めるか流すかを決める

シャッタースピードは秒で表し、1/1000秒のように分母が大きいほど短い。短いほど光を受ける時間が減って暗くなり、そのかわり動きが止まる。1/1000秒なら水しぶきの粒が写り、1/30秒なら歩く人の足が流れる。

ブレには二種類あり、対処法が違う。手ブレはカメラが動くことで画面全体が流れる現象で、被写体ブレは被写体だけが流れる現象だ。レンズやボディの手ブレ補正が効くのは手ブレだけで、被写体ブレは止められない。「手ブレ補正付きのレンズなのに子どもがブレる」という悩みは、ほぼすべてこの混同から起きる。

手ブレの目安は「1/焦点距離秒」。35mm判換算で50mmなら1/50秒、200mmなら1/200秒より速くする。APS-C機に50mmのレンズを付けるなら換算75mm相当なので1/80秒あたりが下限になる。手ブレ補正があれば2段から4段分ゆっくりでも止まるが、それは静止した被写体に限った話だ。

被写体ブレを止めるには、歩く人で1/125秒、走る子どもやペットで1/500秒、スポーツや飛ぶ鳥で1/1000秒以上が起点になる。逆に流したいときは、滝の水を絹のようにするなら1/4秒から数秒、走る車の流し撮りなら1/30秒前後を使う。長秒では三脚が前提になる。

ISO感度はノイズと引き換えに明るさを買う

ISO感度は、受け取った光の信号をどれだけ増幅するかを示す。ISO100からISO200にすれば明るさは2倍になる。ただし増幅なので、ノイズが増え、細部が甘くなり、階調やダイナミックレンジも狭くなる。画質が最も良いのはそのカメラの最低感度(ベース感度)で、多くはISO100かISO64だ。ISO50などL表記の拡張感度は、数値のわりに階調面で不利になりやすい。

それでも「ISOは上げない」を目的にしてはいけない。ISOを渋った結果シャッタースピードが落ちてブレた写真は、ノイズの多い写真より取り返しがつかない。ノイズは現像時にある程度減らせるが、ブレは戻せない。近年のカメラはISO3200からISO6400でも実用的な画質を保つ。まず必要なシャッタースピードを確保し、足りない明るさをISOで埋める順番が基本になる。

一段(1EV)で数えると設定変更が読める

三つの要素は「段(EV)」という共通の単位で比較できる。1段は光の量が2倍または半分になる変化を指す。シャッタースピードとISO感度は数値が2倍・半分でちょうど1段だが、絞りだけは並びが独特で、F1.4・F2・F2.8・F4・F5.6・F8・F11・F16とおよそ1.4倍ごとに1段暗くなる。開口の面積が半分になる計算のため、この飛び飛びの数字になる。

要素1段明るくする1段暗くする
絞りF5.6 → F4F5.6 → F8
シャッタースピード1/125秒 → 1/60秒1/125秒 → 1/250秒
ISO感度ISO400 → ISO800ISO400 → ISO200

片方を1段暗くしたら、もう片方を1段明るくすれば明るさは変わらない。F5.6・1/125秒・ISO400と、F4・1/250秒・ISO400と、F5.6・1/250秒・ISO800は、すべて同じ明るさの写真になる。違うのはボケ量とブレ方とノイズだけだ。設定を変えるときに何段動かしたかを数える癖をつけると、露出が狂う失敗はほとんどなくなる。

撮影モードは「何を自分で決めたいか」で選ぶ

絞り優先(A / Av)

絞りとISOを自分で決め、シャッタースピードをカメラに任せるモード。ボケの量を主導したい撮影のほとんどはこれで足りる。ポートレート、物撮り、風景、スナップと守備範囲が広い。落とし穴は、暗い場所でカメラが勝手にシャッタースピードを落としてブレることだ。ISOオートの設定画面にある「低速限界」や「シャッタースピード下限」を1/125秒などに指定しておけば、下限に達した時点でISOが上がるようになり、この失敗を防げる。

シャッター優先(S / Tv)

シャッタースピードを自分で決め、絞りをカメラに任せるモード。動きを止めたい、あるいは意図的に流したいときに使う。注意点は、レンズが開放F値に達すると、それ以上明るくできず露出不足になることだ。多くの機種ではF値の表示が点滅して警告する。ISOオートを併用しておけば、開放に達した後はISOが上がって露出を保つ。

マニュアル(M)

絞りとシャッタースピードの両方を自分で決める。光の条件が変わらないスタジオや星景、逆に画面内の明るさが激しく変わるステージや逆光のスナップで、露出を固定したいときに向く。実用上よく使われるのが、絞りとシャッタースピードを固定してISOだけオートにする組み合わせで、ボケ量とブレの両方を握りながら明るさの変化にはカメラが追従する。動体撮影では扱いやすい。

露出補正はカメラの判断を意図的にずらす操作

カメラの露出計は、画面全体の明るさがおおむね中間の灰色になるように露出を決める。この仕組みのため、雪原や白い壁のような明るい被写体は暗めに、黒い車や暗い背景は明るめに写ってしまう。露出補正は、この機械的な判断を撮影者が上書きする操作だ。白いものが多い画面や逆光の人物では+0.7EVから+1.7EV、黒いものが画面を占めるときは-0.3EVから-1EVが目安になる。

補正がどこに効くかはモードで変わる。絞り優先ではシャッタースピードが、シャッター優先では絞りが、Pモードでは両方がずれる。ISOオートのマニュアルではISOが動く。ISOを固定したマニュアルでは、露出補正ダイヤルを回しても明るさは変わらず、露出計の指標が動くだけになる。

結果の確認はモニターの見た目ではなくヒストグラムと白飛び警告で行う。RAWで撮っていれば暗すぎた露出はある程度救えるが、完全に白飛びした部分は情報が残らず戻せない。迷ったら明るい側を残す、つまりわずかに暗めに撮るほうが安全だ。

シーン別に決める順番

日中の屋外

光が十分にあるので、ISOは最低感度に固定してよい。晴天ならF8・1/500秒・ISO100あたりが起点になる。露出計が読めない場面では、晴天でF16のときシャッタースピードがISO値の逆数になる(ISO100ならおよそ1/100秒)という関係を覚えておくと見当がつく。ポートレートでボケを出したいならF1.8からF2.8にするが、明るすぎてシャッタースピードが機械の上限を超える場合がある。そのときはNDフィルターで光を減らすか、上限の高い電子シャッターに切り替える。

室内

室内の明るさは屋外の数十分の一しかない。絞り優先でF1.8からF2.8を選び、ISOは1600から6400まで許容し、シャッタースピードは静物でも1/60秒、人がいるなら1/125秒を下限として死守する。蛍光灯やLEDの下で明るさや色がコマごとにばらつくときはフリッカーが原因で、シャッタースピードを電源周波数に合わせると収まる。東日本(50Hz)なら1/100秒、西日本(60Hz)なら1/120秒付近に固定する。

夜景

三脚を使えるなら、ISOは最低感度、絞りはF8前後、シャッタースピードは数秒という設定で画質が最も良くなる。街灯が光条として伸びるのも絞った効果だ。手持ちなら方針が変わり、開放付近のF値、ISO3200から12800、シャッタースピードは手ブレの目安を下回らない範囲で決める。イルミネーションや看板は点光源が白飛びしやすいので、-0.3EVから-1EVの露出補正をあらかじめ入れておくと失敗が減る。

動きのある被写体

この場面だけは、シャッタースピードを最初に決める。シャッター優先か、絞りとシャッタースピードを固定したマニュアル+ISOオートを使う。子どもやペットで1/500秒、球技で1/1000秒、飛ぶ鳥で1/2000秒が起点だ。結果として絞りは開放付近になりピント面が薄くなるので、瞳AFや追尾AFと連写を併用する。流し撮りをするなら逆に1/30秒から1/60秒まで落とし、カメラを被写体の動きに合わせて振る。

シーン先に決める要素起点となる設定
晴天の屋外絞りF8 / 1/500秒 / ISO100
室内・人物ありシャッタースピード下限F2 / 1/125秒 / ISO3200
夜景・三脚絞りF8 / 4秒 / ISO100
動体シャッタースピードF2.8 / 1/1000秒 / ISOオート

迷ったときの切り分け手順

撮影前に自問する順序を固定しておくと、設定に悩む時間が減る。まず、この一枚で最優先なのはボケの量か、ブレを止めることか。前者なら絞り優先、後者ならシャッター優先を選ぶ。次に、表示されているシャッタースピードが手ブレと被写体ブレの目安を上回っているかを確認し、足りなければISOを上げる。最後に、画面に白いものや黒いものが多くないかを見て露出補正を当てる。

この順で回せば、うまくいかなかったときに原因を三つのどれかに切り分けられる。背景がうるさければ絞り、輪郭が二重なら手ブレ、被写体だけ流れていれば被写体ブレ、ざらつきが気になればISOが高すぎたということだ。まずは同じ被写体を絞りだけ変えて三枚、シャッタースピードだけ変えて三枚撮り、後でExifと見比べてほしい。数値と写りの対応が体に入れば、あとは現場で段を数えるだけになる。