画角はレンズとセンサーの組み合わせで決まる

焦点距離はレンズの光学的な性質を表す数値で、単位はmmです。値が小さいほど広い範囲が写り、大きいほど狭い範囲を大きく写します。ただし焦点距離だけでは、写真に写る範囲は決まりません。同じレンズでも、カメラのセンサーが小さければ写る範囲は狭くなります。

理由は単純です。レンズはカメラの内部に円形の像を作り、センサーはその一部を四角く切り取っているだけだからです。切り取る枠が小さければ、写る範囲も狭くなります。この「写る範囲の広さ」を角度で表したものが画角です。

35mm判換算は画角をそろえるための計算

センサーサイズが違うカメラ同士で焦点距離を比べても意味がありません。そこで基準として使われるのが、フィルム時代の35mm判(いわゆるフルサイズ、36×24mm)です。実焦点距離に下の係数を掛けると、フルサイズ換算の焦点距離になります。

センサーおおよその寸法換算係数
フルサイズ(35mm判)36 × 24 mm1.0倍
APS-C(多くのメーカー)23.5 × 15.6 mm約1.5倍
APS-C(キヤノン)22.3 × 14.9 mm約1.6倍
マイクロフォーサーズ17.3 × 13.0 mm約2.0倍

APS-Cに35mmのレンズを付ければ換算約52mm、マイクロフォーサーズに25mmを付ければ換算50mmです。どちらもフルサイズの50mmとほぼ同じ範囲が写ります。

ここで誤解しやすい点があります。換算されるのは画角だけです。F値も、ボケの大きさも、レンズに書かれた実焦点距離のまま変わりません。露出(写真の明るさ)はF値とシャッター速度とISO感度で決まるので、F2.8はどのセンサーでもF2.8として同じ明るさです。一方でボケの量は実焦点距離に依存するため、同じ構図・同じF値でも、センサーが小さいカメラほどボケは小さくなります。ボケの量までそろえて比べたいときは、F値にも同じ係数を掛けた値で考えます。マイクロフォーサーズの25mm F1.8は、画角とボケの見え方でいえばフルサイズの50mm F3.5前後に近い、という具合です。明るさは変わらず、ボケだけが変わる、と覚えてください。

ボケを決める4つの条件

背景のボケが大きくなるのは、絞りを開けたとき、実焦点距離が長いとき、被写体に近づいたとき、そして被写体と背景が離れているときです。

このうち初心者が見落としがちなのが後ろの2つです。明るい単焦点レンズを買わなくても、被写体に一歩寄り、背景が遠くなる立ち位置を選ぶだけで、ボケは目に見えて大きくなります。逆に背景が被写体のすぐ後ろにある状況では、どんなにF値の小さいレンズを使ってもボケません。まず立ち位置を変える、それでも足りなければ機材を検討する、という順序が実用的です。

パースと圧縮効果を作るのは撮影距離

遠近感(パース)の強さを決めるのは、被写体との距離だけです。焦点距離そのものではありません。

広角レンズで撮った写真の手前が大きく誇張されて見えるのは、広角だと被写体に近づけるからです。望遠レンズで前後の被写体が詰まって見える「圧縮効果」も同じで、望遠だと遠くから撮ることになるからです。同じ位置から広角で撮って中央をトリミングすれば、望遠で撮った写真と遠近感は一致します。

この理解には実用的な意味があります。人物の顔を自然な立体感で写したいなら、レンズを望遠に替えるより先に、被写体から2〜3m離れることが効きます。逆に建物や乗り物を迫力ある形に見せたいなら、広角レンズで思い切って近づきます。

広角・標準・望遠の役割

換算24〜35mmの広角は、狭い室内や風景、建物の全景に使います。近接時の誇張が強く、画面の四隅は引き伸ばされて写るため、人物の顔を端に置くと不自然に太って見えます。集合写真では顔を中央寄りに配置してください。

換算50mm前後の標準は、肉眼に近い遠近感が得られます。誇張も圧縮も少なく、被写体の形をそのまま伝えたいときの基準になります。

換算85〜135mmの中望遠は、人物の上半身やテーブルの上の料理など、少し離れて撮りたい被写体に向きます。背景が整理されやすく、ボケも得やすい領域です。

換算200mm以上の望遠は、스포츠や野鳥、舞台など物理的に近づけない被写体が対象です。手ブレとの戦いになるので、手ブレ補正の有無とシャッター速度の確保が前提になります。

必要な焦点距離を逆算する

「何mmが必要か」は計算で出せます。使う式はひとつです。

換算焦点距離(mm) = 撮影距離(mm) × 36 ÷ 写したい横幅(mm)

縦方向で考えるときは36を24に置き換えます。マクロ域のような極端に近い距離ではずれますが、通常の撮影距離では十分な目安になります。

室内で家族を撮る場合を考えます。3mしか下がれない部屋で、横4mの範囲を入れたいとします。3000×36÷4000で約27mm。換算24〜28mmの広角が必要だと分かります。APS-Cなら実焦点距離18mm前後、マイクロフォーサーズなら14mm前後です。

ポートレートでは逆に距離を求めます。換算85mmで上半身(縦1m)を収めたいなら、1000×85÷24で約3.5m。この距離を取れる場所があるかどうかが、85mmを選べるかの判断材料になります。

運動会なら、30m先で数人(横4m)を写す想定で30000×36÷4000。約270mmとなり、換算300mmクラスが要ることが分かります。APS-Cなら200mmのレンズで足ります。

近接撮影では、計算上の距離がレンズの最短撮影距離を下回っていないかも確認してください。仕様表に記載があります。

単焦点かズームかを分ける基準

第一の判断軸は、撮影距離を自分で変えられるかどうかです。自分の足で前後に動ける被写体なら、単焦点で不足はありません。観客席や柵の外、式典の座席のように立ち位置が固定される撮影では、ズームでないと構図を作れません。

第二の軸は、逆算した焦点距離が1つの値に収まるかです。同じ被写体を同じ距離で撮り続けるなら単焦点が有利で、同じ場所で全景とアップを撮り分ける必要があるならズームです。

第三の軸は、ボケと暗所性能をどこまで求めるかです。同じ価格帯なら単焦点のほうがF値が小さく、センサーの小さいカメラでボケを稼ぎたい場合は差が出ます。

なお価格や在庫は変動します。金額は執筆時点の目安として捉え、購入前に販売店やメーカーの公式情報で確認してください。中古レンズでは、マウントが一致していても、フルサイズ機にAPS-C専用レンズを付けると自動クロップで画素数が落ちる点、他社マウントのアダプタでは絞りや自動焦点が制限される場合がある点に注意が必要です。装着可否と機能制限は別問題なので、対応表を必ず確認してください。

次にやること

手持ちの写真のExif情報を開き、焦点距離の分布を確認してください。多くの現像ソフトやパソコンのファイル情報で見られます。特定の焦点距離に集中しているなら、そこが自分の標準です。その値の単焦点を検討する価値があります。ズームの広角端や望遠端に張り付いているなら、その方向の画角が足りていない証拠です。

そのうえで、いちばん撮りたい被写体について「下がれる距離」と「入れたい範囲」を実際に測り、上の式に入れてみてください。出てきた数字と手持ちレンズの差が、買い足すべき焦点距離です。