まず分ける:完全に無反応か、半押しまでは効くか
シャッターが切れない原因は大きく二つに分かれる。カメラが撮影動作そのものを受け付けていない状態と、条件が揃うのを待っている状態だ。切り分けの入口は半押しの反応で決まる。
シャッターボタンを軽く半押しする。ファインダーや背面モニターに絞り値やシャッター速度が表示され、AFフレームが動いたり合焦マークが点いたりするなら、電源系とカードは概ね正常だ。この場合はレンズ、AF、ドライブモードの節へ進む。半押ししても表示が出ない、モニターが真っ暗のまま、ランプも点かないという場合は、次の電源の節から順に確認する。
電源:表示が出ないときはバッテリーと各ふたを確認する
最初に疑うのはバッテリーだ。残量表示が満タンでも、劣化したセルは負荷がかかった瞬間に電圧が落ち、動作しないことがある。冬場の屋外や冷えた車内では、常温の室内に戻すだけで復活する場合も多い。充電済みの別のバッテリーがあれば入れ替えて試す。これで表示が出れば原因はバッテリー側で確定する。
純正以外のバッテリーを使っている場合、ファームウェア更新後に認識されなくなることがある。純正品で動くかどうかを確認したい。
見落としやすいのが各部のふただ。多くの機種はバッテリー室ふたやカードスロットのふたが完全に閉まっていないと動作しない。カチッと音がするまで閉め直す。三脚のクイックシューがバッテリー室ふたに干渉している例もある。
電源スイッチをオンにしても無反応で、バッテリーを替えても変わらないなら、この時点で最後の節のリセット手順へ飛んでよい。表示は出るが切れないという場合は次へ進む。
記録メディア:未挿入・ロックスイッチ・空き容量・書き込み中
カード未挿入でシャッターを禁止する設定が既定の機種は多い。カードなしレリーズのような名称の項目が無効になっていると、カードを入れるまで切れない。カードが入っているかをまず目視で確認する。
SDカードの側面にある小さなスライドスイッチは書き込み禁止スイッチだ。これが下がっているとカメラは記録できず、多くの機種はエラー表示を出して切れなくなる。抜き差しを繰り返すうちに緩んで自然に下がることがあるため、満充電のカードでも一度確認したい。上側に戻して入れ直す。
空き容量も原因になる。撮影可能枚数がゼロなら切れない。特にRAWと動画を混在させていると、表示上は余裕があるように見えて実際は足りていないことがある。
アクセスランプが点灯・点滅している間は書き込み中で、動作が止まって見える。この状態でカードやバッテリーを抜くとデータが壊れるため、消えるまで待つ。
カードが異常ですという趣旨のエラーが出る場合は、パソコンで画像を退避したうえで、カメラ本体のメニューからフォーマットする。パソコン側でのフォーマットは相性の問題を残しやすい。別のカードに入れ替えて切れるならカードが原因、変わらないなら次へ進む。
レンズ:装着の甘さ、接点の汚れ、アダプタ使用時の設定
レンズが正しく認識されていないと、ボディはレンズなしと判断してシャッターを止める。いったんレンズを外し、ボディ側とレンズ側の装着指標を合わせて、カチッとロックの音がするまで回して付け直す。半差しの状態は見た目では気づきにくい。
マウント面の電子接点が汚れていても通信が途切れる。ブロアーでほこりを飛ばし、乾いた清潔なクロスで軽く拭う。金属部分を強くこすったり、溶剤を直接付けたりはしない。
マウントアダプタを介している場合は注意が必要だ。電子接点を持たないアダプタやオールドレンズでは、ボディはレンズを検出できない。この場合はレンズなしレリーズに相当する設定を有効にしないと、いつまで待ってもシャッターは切れない。メーカーやマウントによって設定名も場所も異なるため、使用機種の説明書で該当項目を探す。
絞りリングを備えたレンズを電子制御で使う組み合わせでは、絞りリングを指定の位置に固定しないとエラーになるものがある。該当するレンズを使っているなら、その位置になっているかを確かめる。
切り分けの目安はこうだ。別のレンズに交換して切れるならレンズかアダプタが原因。どのレンズでも切れないならボディ側の可能性が高く、次の節へ進む。
ピントが合わないと切れない:フォーカス優先の設定
半押しは効くのにシャッターが下りないなら、まずこれを疑う。単写のAF(AF-S、ワンショットAFなどと表記される)は、初期設定ではピントが合うまでシャッターを止める。これはフォーカス優先と呼ばれる挙動で、故障ではない。
AFが迷う条件は決まっている。暗い場所、コントラストの乏しい壁や空、細かい繰り返し模様、ガラスや金網越し、そして被写体が最短撮影距離より近い場合だ。マクロ撮影で寄りすぎているときによく起きる。
確認は簡単で、フォーカスモードをMFに切り替えて押してみる。これで切れるならAFが合っていないことが原因だ。被写体との距離を取り直す、AFフレームをコントラストのある輪郭に合わせる、AF補助光を有効にするといった対処で解決する。
レンズ側のAF/MFスイッチとボディ側の設定が食い違っていると、AFが動かないまま合焦もしない状態になる。両方の位置を揃える。機種によってはカスタムメニューでレリーズ優先に変更でき、ピントより先にシャッターを切れるようになる。
ドライブモードと特殊撮影の取りこぼし
セルフタイマーが有効なら、押してから設定秒数はシャッターが下りない。切れていないのではなく待っている状態だ。リモコン撮影モードに入っている機種では、ボディのシャッターボタンが効かなくなる設定もある。ドライブモードの表示を確認し、単写に戻す。
インターバル撮影や多重露光の途中も、次のコマまで受け付けない。前回の撮影で設定したまま解除し忘れていないか見る。
電子シャッターや静音撮影では作動音がしない。切れていないと思って何度も押していたが、実際は撮れていたというケースもある。再生画面でコマ数が増えているかを確かめる。
連写のあとに止まる場合はバッファの書き込み待ち
連写した直後だけ反応しなくなるなら、内部メモリー(バッファ)がいっぱいでカードへの書き込みを待っている状態だ。数秒から数十秒で自動的に復帰する。
復帰が遅い原因は、書き込み速度の遅いカード、RAW+JPEG同時記録、連写枚数の多さにある。速度規格の高いカードに替えると改善する。
長秒時ノイズ低減が有効な場合、露光した秒数とほぼ同じ時間だけ処理が入る。30秒露光なら約30秒間、次の撮影ができない。待って復帰するなら故障ではない。
直らないときのリセットと、修理を検討する基準
ここまでで原因が特定できなければ、順にリセットを試す。まずバッテリーとカードを抜いて数分置き、入れ直す。次にメニューから設定リセットを実行する。カスタム設定を作り込んでいる場合は、実行前に控えを取っておく。最後にメーカーのサポートページで最新のファームウェアを確認し、更新されていれば適用する。特定の条件でシャッターが切れない不具合が、更新で修正されている場合がある。
落下や水濡れのあとに発症した、エラーコードが表示される、シャッター付近から普段と違う音がする、という場合は自己判断での分解や強い力での操作を避け、メーカーのサポート窓口に相談する。シャッターユニットには耐久回数の目安があり、酷使した個体では作動不良として現れることもある。
問い合わせる前に、ここまでの切り分け結果を書き出しておく。別のバッテリー・別のカード・別のレンズで再現するか、MFなら切れるか、エラー表示の文言は何か。この情報があると原因の特定が早く、見積もりも正確になる。
修理に出すかどうかは、見積額と同じ機種の中古相場を比べて決める。保証期間内なら購入店経由での依頼が早い。発売から年数が経った機種は補修部品の保有期間を過ぎて修理を受けられないこともあるため、その場合は買い替えを含めて検討することになる。