判断基準:背景ボケと暗所なら単焦点、画角の幅と身軽さならズーム

背景を大きくぼかしたい人、暗い室内で手ブレや被写体ブレを抑えたい人には単焦点レンズが向きます。単焦点レンズは焦点距離が1つに固定されたレンズです。立ち位置を変えられない場面で画角を素早く変えたい人、レンズを1本にまとめたい人、望遠が必要な人にはズームレンズが向きます。

キットズームは、カメラとセットで売られる標準ズームです。多くは開放F値がF3.5〜5.6程度で、暗さとボケの小ささが不満になりやすいレンズです。一方で「広角も望遠も足りない」という不満なら、次に選ぶべきはズームです。今の不満が明るさなのか画角なのかを先に切り分けると、選び方がはっきりします。

6つの観点で比べる単焦点とズーム

観点単焦点ズーム
明るさ(F値)F1.4〜F2程度の明るいレンズが手頃な価格で多いF2.8通しは高価で重い。手頃なものはF4〜6.3程度
画質同じ価格帯なら有利なことが多い上位機種は単焦点に近い。高倍率ズームは周辺画質で不利
サイズと重さ標準域のF1.8クラスは小型軽量明るいほど大きく重い
価格入門用の単焦点は安い明るさと画質を求めると高くなる
撮影の自由度画角が固定なので自分が動く必要があるその場で構図を調整できる
交換の手間画角を変えるたびにレンズ交換が要る1本で済む場面が多い

明るさ(F値)

F値は数字が小さいほど多くの光を取り込めます。F1.8はF5.6より約3段明るく、同じ明るさの写真を約8分の1の露光時間で撮れます。たとえば1/15秒でブレていた室内の写真を、1/125秒前後で撮れる計算です。背景のボケも大きくなります。ズームでF2.8を保つレンズもありますが、価格と重さが大きく上がります。

画質

単焦点は構造が単純な分、同じ価格なら解像感や逆光への強さで有利な傾向があります。ただし近年の上位ズームは単焦点との差が小さくなっています。安価な単焦点は開放で周辺が甘くなるものもあります。絞って撮る風景では両者の差は目立ちにくくなります。

サイズと重さ

50mm前後のF1.8クラスは200g前後の製品が多く、カメラに付けたままでも負担になりません。F2.8通しの標準ズームは500g〜900g程度が中心です。単焦点でもF1.2やF1.4の大口径タイプは重くなるので、単焦点ならどれも軽いわけではありません。

価格

執筆時点では、各社の50mm F1.8クラスは数万円程度から手に入ります。F2.8通しの標準ズームはサードパーティ製で10万円前後から、純正では20万円を超える製品も珍しくありません。価格は変動するため、購入前に販売店で確認してください。

撮影の自由度と交換の手間

ズームの強みは、立ち位置を変えられない場所でも構図を詰められることです。単焦点は前後に歩いて構図を作る必要があり、柵のある場所や混雑した場所では撮りにくくなります。単焦点を複数本持つと交換の手間が増え、交換中にシャッターチャンスを逃したり、センサーにゴミが付いたりする原因にもなります。

用途別の向き不向き

旅行:ズームを軸に、夜用に小型単焦点を足す

風景、建物、食事と被写体が次々に変わる旅行では、ズームが向きます。高倍率ズームなら1本で済みますが、暗く、周辺画質も落ちやすい点が弱点です。夜の街や室内の食事を撮るなら、軽い単焦点を1本足すと荷物をあまり増やさずに暗さへの不満を解消できます。

子ども:屋外はズーム、室内は単焦点

公園や運動会では子どもとの距離が絶えず変わるため、ズームが向きます。運動会は望遠ズームが必要です。家の中では明るい単焦点が有利で、速いシャッター速度で動きを止められます。ただしF1.8などの開放ではピントの合う範囲が薄くなります。動く子どもにはF2.8前後まで絞るとピントを外しにくくなります。

ポートレート:単焦点が有利

背景を大きくぼかして人物を浮き立たせるには単焦点が有利です。定番はフルサイズ換算85mm前後です。APS-C機なら50mmのレンズで換算75〜80mm相当になります。弱点は画角が固定されることで、狭い室内では被写体から十分に離れられない場合があります。

風景:ズームが基本

風景はF8前後まで絞ることが多く、明るさの利点が小さくなります。構図を細かく調整できる広角ズームや標準ズームが向きます。例外は星空で、明るい広角単焦点が有利です。

室内(料理・インテリア・ペット):広めの単焦点

暗さに強い単焦点が向きますが、焦点距離の選び方が重要です。狭い部屋では換算50mmでも窮屈に感じることがあり、換算35mm前後のほうが扱いやすくなります。

予算別の選び方

3万円前後までなら、各社の50mmや35mmクラスの明るい単焦点が最も満足感を得やすい選択です。キットズームとの違いを一番はっきり感じられます。5〜10万円なら、望遠ズームで画角を広げるか、サードパーティ製の明るい単焦点や高倍率ズームを選ぶかで、今の不満に合わせて分かれます。10万円を超えるなら、F2.8通しやF4通しの標準ズームでキットズームを置き換えると、画角の自由度を保ったまま画質と明るさを上げられます。

装着できないレンズを買わないための確認

レンズはカメラと同じマウントでなければ装着できません。同じメーカーでも一眼レフ用とミラーレス用はマウントが違います。キヤノンのEFとRF、ニコンのFとZが代表例です。一眼レフ用レンズは純正のマウントアダプター(キヤノンのEF-EOS R、ニコンのFTZ/FTZ IIなど)でミラーレス機に付けられる場合があります。しかし逆方向の装着はできません。アダプター経由ではAFの速度や対応機能が制限されることもあるため、対応表を必ず確認してください。

センサーサイズにも注意が必要です。ソニーのEマウントのように、フルサイズ用とAPS-C用が同じマウントを使う場合があります。APS-C用レンズをフルサイズ機に付けると、周辺が暗く欠けるかクロップ撮影になります。APS-C機では写る範囲がフルサイズの約1.5〜1.6倍の焦点距離相当に、マイクロフォーサーズ機では約2倍相当になります。焦点距離は必ず換算値で考えてください。

次の1本を決める手順

最初に、キットズームで撮った写真のExif情報から焦点距離を確認してください。Exifは写真に記録される撮影データです。広角端か望遠端に撮影が偏っていて、画角が足りないと感じていたなら、その方向に広げるズームを選びます。ある焦点距離に撮影が集中していて、暗さやボケの小ささが不満だったなら、その焦点距離に近い単焦点が次の1本です。候補を決めたら、手持ちのカメラのマウントとセンサーサイズに対応しているかを確かめます。価格は販売店で確認し、可能なら店頭で自分のカメラに付けて重さとバランスを試してください。