画質設定メニューの選択肢は「記録形式」を決める
カメラの画質設定メニューには、「JPEG」「RAW」「RAW+JPEG」が並びます。新しい機種では「HEIF」や、RAWの種類を選ぶ「RAWファイル形式」という項目もあります。どれも、撮った写真をどの形式で記録するかを決める設定です。ここを理解せずに選ぶと、困ることが三つあります。あとから色を直せない、カードがすぐ一杯になる、パソコンで開けない、の三つです。
JPEG:カメラが仕上げた完成品
JPEGは、カメラ内部で色・明るさ・シャープさを決めてから圧縮した画像です。パソコンでもスマートフォンでもそのまま開けて、SNSにもすぐ投稿できます。色の階調は各色8bit(約1677万色)です。仕上げの段階で使わなかった情報は捨てられます。そのため、あとから大きく補正すると色が崩れたり、なめらかなグラデーションに段差が出たりします。
HEIF:JPEGより小さく、階調が豊かな形式
HEIFは、同程度の画質ならJPEGより小さいファイルで保存できる形式です。10bitで記録できるので、夕焼けの空のようなグラデーションに段差(トーンジャンプ)が出にくくなります。iPhoneの標準形式であるHEICも同じ仕組みです。弱点は互換性です。古い画像ソフトやWebサービスでは開けないことがあり、Windowsでは拡張機能の追加が必要な場合があります。機種によっては、HDR撮影の設定を有効にしたときだけ選べます。
RAW:センサーの記録をほぼそのまま残したデータ
RAWは、仕上げる前の「生」のデータです。多くの機種が12〜14bitで記録するため、JPEGより格段に多くの階調情報が残ります。拡張子はメーカーごとに違います。キヤノンは.CR3、ニコンは.NEF、ソニーは.ARW、富士フイルムは.RAFです。RAWを見られる画像に仕上げる作業を「現像」と呼びます。
撮影後にどこまで補正できるか
いちばん大きな差はホワイトバランス(光の色に合わせて白を白く写す調整)に出ます。RAWなら撮影後に「太陽光」から「電球」へ切り替えるように、設定そのものを変えられます。JPEGでは色がすでに画像に書き込まれています。色かぶりを打ち消そうとすると、ほかの色までずれやすくなります。
明るさの補正にも差があります。RAWは暗すぎた写真を持ち上げたり、白飛びしかけた空の色を取り戻したりする余裕が大きめです。どこまで戻せるかは機種とISO感度で変わります。JPEGで同じことをすると、ノイズや色の破綻が早く目立ちます。ただし、センサーの限界を超えて真っ白に飽和した部分は、RAWでも元に戻りません。RAWは露出の失敗をすべて帳消しにする手段ではない、と覚えておいてください。
RAWでは、ノイズ低減の強さ、レンズの歪み補正、ピクチャースタイルやフィルムシミュレーションのような色の仕上げ設定も、あとから選び直せます。
RAWの3種類:非圧縮・ロスレス圧縮・圧縮
非圧縮RAWは、データを圧縮せずにそのまま保存します。ファイルはいちばん大きくなります。ロスレス圧縮RAWは可逆圧縮で、ZIPファイルのように元の情報を完全に復元できます。画質は非圧縮と同じで、サイズはおおむね半分から3分の2程度に収まります。圧縮RAWは非可逆圧縮で、情報の一部を間引いてさらに小さくします。通常の現像では差はほぼ分かりません。ただ、極端に明るさを持ち上げると、明暗の境目などに差が出ることがあります。
メニューでの呼び名はメーカーによって違います。ソニーと富士フイルムは「非圧縮/ロスレス圧縮/圧縮」と表示します。キヤノンは「RAW」と「C-RAW」で、C-RAWが非可逆圧縮にあたります。ニコンの最近の機種は「ロスレス圧縮RAW」と「高効率RAW」で、高効率RAWが非可逆圧縮です。ソニーの一部機種では、ロスレス圧縮にL/M/Sのサイズ選択があります。MとSは画素数そのものが減るので注意してください。迷ったらロスレス圧縮を選べば、画質を損なわずに容量を節約できます。
ファイルサイズと連写が続く枚数の差
2400万画素クラスのカメラで撮った場合の目安を下の表にまとめます。実際のサイズは被写体の細かさやISO感度で変わり、画素数が多い機種ほど大きくなります。
| 形式 | 1枚あたりの目安 | 撮影後の補正の自由度 | 開くのに必要なもの |
|---|---|---|---|
| JPEG(最高画質) | 約8〜15MB | 小さい | 不要 |
| HEIF | JPEGより小さめ | JPEGよりやや大きい | 対応した閲覧ソフト |
| 圧縮RAW | 約20〜25MB | 大きい | 現像ソフト |
| ロスレス圧縮RAW | 約25〜35MB | 大きい | 現像ソフト |
| 非圧縮RAW | 約45〜50MB | 大きい | 現像ソフト |
ファイルサイズは連写にも影響します。カメラは撮った画像をいったん内部のメモリー(バッファ)にためてから、カードに書き込みます。1枚が大きいほどバッファは早く一杯になり、連写が途中で遅くなります。RAW+JPEGは2つのファイルを同時に書くので、最も早く詰まります。運動会や野鳥で連写を多用する人は、使っているカメラの仕様表で「連続撮影可能枚数」を確認してください。多くのメーカーが記録形式ごとの枚数を載せています。書き込みの速いカードを使うと、詰まったあとの回復も早くなります。
RAWには現像する手段が必要
RAWはそのままではSNSに投稿できません。現像の手段は三つあります。一つ目は、多くのカメラが備えている「カメラ内RAW現像」機能です。二つ目はメーカーの無料ソフトで、キヤノンのDigital Photo Professional、ニコンのNX Studio、ソニーのImaging Edge Desktop、富士フイルムのFUJIFILM X RAW STUDIOなどがあります。三つ目はAdobe Lightroom Classic、Capture One、DxO PhotoLabといった市販ソフトです。新機種の発売直後は、市販ソフトがまだそのRAWに対応していないことがあります。その間はメーカー純正ソフトを使ってください。
RAW+JPEGを含めた選び方
撮った写真をすぐ共有し、補正はほとんどしない人はJPEGで十分です。画質はいちばん高い設定にしておきます。HEIFを使うなら、写真を見るパソコンや投稿先が対応しているか先に確かめてください。
補正を覚えたい人や、失敗写真を救いたい人にはRAW+JPEGが向いています。JPEGはすぐに共有でき、うまくいかなかったカットだけRAWから直せます。代わりにカードの消費が増え、連写が続く枚数は減ります。
毎回パソコンで仕上げる人はRAWだけで記録し、形式はロスレス圧縮を選びます。連写の枚数やカード容量が足りないときは、圧縮RAWに切り替えます。
判断に迷うなら、次の撮影をRAW+JPEGで試してください。ホワイトバランスや露出を外した1枚をRAWから直し、JPEGとの差を自分の目で確かめます。数か月たってもRAWをほとんど開いていなければ、JPEGに戻して容量と連写を優先してかまいません。