違いは露光の始まりと終わりを何が担うか
シャッターは、センサーに光を当てる時間を決める仕組みです。この時間を露光と呼びます。多くのミラーレスカメラでは、露光を始める役と終える役を、機械の幕に任せるか、センサーの電気的な処理に任せるかを選べます。組み合わせは次の3通りです。
| 方式 | 露光の開始 | 露光の終了 | 主な弱点 |
|---|---|---|---|
| メカシャッター | 先幕(機械) | 後幕(機械) | 作動音と振動。連写速度に上限がある |
| 電子先幕シャッター | センサーのリセット(電子) | 後幕(機械) | 高速シャッターでボケ欠けや露出ムラが出る |
| 電子シャッター | センサーのリセット(電子) | センサーの読み出し(電子) | 動体の歪み、フリッカーの縞、フラッシュの制限 |
メニューでの名称はメーカーごとに違います。多くは「シャッター方式」などの項目で切り替えます。条件に応じてカメラが自動で方式を選ぶ設定を持つ機種もあります。
メカシャッター:2枚の幕の間のすき間で露光する
センサーの直前には、フォーカルプレーンシャッターがあります。先幕と後幕の2枚の幕でできた機構です。先幕が開くと露光が始まり、後幕が閉じると終わります。シャッター速度が速いときは、先幕が開き切る前に後幕が走り始めます。そのため、2枚の幕の間の細いすき間(スリット)が画面を横切りながら露光していきます。
ミラーレスカメラは、撮影前から幕を開けてセンサーに像を映しています。そのため、シャッターを押すといったん幕を閉じ、それから先幕を走らせます。この動きが音と振動の原因です。振動はシャッターショックと呼ばれます。望遠レンズを使うときや、中くらいから遅めのシャッター速度で、細かいブレの原因になることがあります。
電子先幕シャッター:露光の始まりだけを電子化する
先幕の代わりに、センサーの画素の電荷を上から順に消していくリセット処理で露光を始めます。このリセットは、後幕と同じ速さで画面を進むように制御されています。露光を終えるのは機械の後幕です。幕をいったん閉じてまた開く動きがなくなるので、振動とシャッターを押してからのタイムラグが減ります。
電子シャッター:機械の幕を使わない
リセットで露光を始め、画素の信号を読み出して露光を終えます。読み出しは、全画素を一度に行うのではなく、上の行から順に行うのが一般的です。この方式をローリングシャッターと呼びます。機械が動かないので無音です。幕の速さに縛られないため、超高速シャッターや高速連写も使えます。シャッター幕がすり減る心配もありません。
動く被写体:電子シャッターでのローリングシャッター歪み
電子シャッターでは、画面の上の端と下の端で露光するタイミングがずれます。このずれの間に被写体やカメラが動くと、写った形がゆがみます。走る電車の窓枠が斜めに傾いたり、ゴルフクラブやバットが曲がって写ったり、プロペラがちぎれたような形になったりします。流し撮りでカメラを振ると、背景の電柱などの縦の線が傾きます。
歪みの大きさを決めるのは、センサーの読み出しの速さです。シャッター速度を上げても歪みは解消しません。積層型センサー(読み出し回路を重ねて高速化したセンサー)を積んだ機種は読み出しが速いため、歪みが目立ちにくくなります。ニコン Z9のように、高速読み出しを前提にしてメカシャッター自体を省いた機種もあります。ソニー α9 IIIは、全画素を同時に露光するグローバルシャッターを搭載しています。この方式では、仕組みの上でこの歪みが起きません。
蛍光灯やLED照明の下:フリッカーによる縞
蛍光灯や多くのLED照明は、電源の周波数に合わせて速く点滅しています。この点滅をフリッカーと呼びます。東日本(50Hz)では1秒に100回、西日本(60Hz)では1秒に120回の明滅が基本です。目では気付かなくても、写真には写ります。
電子シャッターでは、行ごとに露光するタイミングがずれます。そのため、明るい帯と暗い帯が交互に並ぶ横縞が出ます。体育館や屋内のイベント会場、店の中などでよく起きます。メカシャッターや電子先幕シャッターでも、高速シャッターではスリットが画面を横切るので、縞や色ムラが出ることがあります。連写したときに、コマごとに明るさや色がばらつくこともあります。
基本の対策は、シャッター速度を明滅の周期の整数倍に合わせることです。東日本なら1/100秒や1/50秒、西日本なら1/120秒や1/60秒にすると、縞が出にくくなります。多くのカメラには「フリッカーレス撮影」「フリッカー低減」などの機能があります。明るさのピークに合わせてシャッターを切る機能です。ただし、電子シャッターでは使えない機種もあります。
フラッシュ撮影:同調速度と電子シャッターの制限
フラッシュが光る時間はごく短いため、画面全体が同時に露光している瞬間に光らせる必要があります。メカシャッターで、画面全体が一度に開いた状態になる最も速いシャッター速度を同調速度と呼びます。値は機種によって違い、仕様表に載っています。同調速度より速くすると、スリットが通過している部分にしか光が当たりません。その結果、画面の一部が黒く写ります。
同調速度より速いシャッター速度でフラッシュを使うときは、ハイスピードシンクロを使います。メーカーによってはFP発光とも呼びます。フラッシュが小刻みに連続して光り、スリットが移動する間ずっと照らし続ける方式です。そのぶん光が届く距離は短くなります。
電子先幕シャッターでもフラッシュは使えます。一方、電子シャッターではフラッシュを使えない機種が少なくありません。対応している機種でも、同調速度はセンサーの読み出しの速さで決まります。グローバルシャッターの機種は例外で、高速シャッターでもフラッシュと同調できます。
明るいレンズと高速シャッター:電子先幕シャッターでのボケ欠け
電子の先幕はセンサーの表面で、機械の後幕はセンサーの数ミリ手前で動きます。この位置の差は、スリットが細くなる高速シャッターほど影響が大きくなります。その結果、開放F値の明るいレンズで撮った背景の玉ボケが片側だけ欠けたり、形がいびつになったりします。画面の上と下で露出がわずかに違ってしまうこともあります。
晴れた屋外で、明るい単焦点レンズを開放にしてポートレートを撮ると、1/2000秒より速いシャッター速度になりがちです。こうしたときは、メカシャッターに切り替えると防げます。NDフィルター(光の量を減らすフィルター)でシャッター速度を遅くする方法もあります。高速側では自動的にメカシャッターに切り替わる設定を持つ機種もあります。
音を出せない場面:電子シャッターを使うときの注意
演奏会や式典、寝ている子どもや動物、警戒心の強い野鳥などの撮影では、電子シャッターが役立ちます。電子先幕シャッターでも後幕の音は鳴るので、完全な無音にはなりません。
ただし、音を出せない場面は屋内照明の下であることが多く、フリッカーの縞が出やすい条件と重なります。本番の前に、同じ会場で試し撮りをして縞が出ないか確かめておくと確実です。また機種によっては、電子シャッターを使うとRAWの階調が粗くなったり、設定できる長いシャッター速度に上限があったりします。詳しくは取扱説明書で確認できます。
どの方式を選ぶかの判断基準
普段は電子先幕シャッターを基準にします。振動とタイムラグが少なく、フラッシュも使えて、歪みやフリッカーの縞も出にくいからです。そのうえで、条件に応じて切り替えます。
明るいレンズを開放付近で使い、1/2000秒より速いシャッター速度になるときは、メカシャッターに切り替えます。音を出せないときや、メカシャッターの上限を超える高速連写が必要なときは、電子シャッターを使います。電子シャッターを照明の下で使う場合は、シャッター速度を明滅の周期の整数倍に合わせます。速く動く被写体を撮る場合は、歪みが許せる範囲かどうかをその場で確認します。
最初の一歩として、自分のカメラのメニューでシャッター方式の項目と自動切り替え設定の有無を確認してください。次に、室内の照明の下で同じ被写体を3つの方式で撮り比べてみてください。自分の機種でどの程度の縞や歪みが出るかが分かり、撮影の現場で迷わずに方式を選べるようになります。