同じマウントに付くレンズでも、純正品とサードパーティ製では写り以外の部分に差が出ます。純正品はカメラメーカー製のレンズです。サードパーティ製はレンズ専業メーカーなど、カメラメーカー以外が作るレンズを指します。この記事では、シグマ、タムロン、サムヤン、ビルトロックス(Viltrox)などの中国系新興メーカーのレンズを純正と比べます。観点はAF、手ブレ補正、収差補正、ファームウェア、価格、サポートの6つです。

判断基準:純正を選ぶ条件、サードパーティ製を選ぶ条件

次の3つのどれかに当てはまる人は、純正を選ぶと失敗が少なくなります。1つ目は、ボディの最高連写速度や最新のAF機能を使い切りたい人です。2つ目は、ボディとレンズの手ブレ補正を連動させたい人です。3つ目は、将来ボディを買い替えても確実に動いてほしい人です。いずれも、純正なら仕様の決め手をカメラメーカー自身が握っているためです。

サードパーティ製が有力になるのは、同じ予算でより明るいレンズや本数の多い組み合わせにしたい場合です。純正にない仕様が欲しい場合も候補になります。たとえば、小型の大口径ズームや安価な単焦点です。ただし、選べるレンズの数はマウントによって大きく違います。この点は後の節で説明します。

6つの観点での比較

AFの速さと追従性

止まった被写体や人物のスナップなら、現行のシグマやタムロンのレンズと純正の差を感じる場面は多くありません。差が出やすいのは、動く被写体を高速連写で追い続けるときです。

ボディとレンズの間の通信仕様はカメラメーカーが決めています。そのため、最高速の連写や新しいAF機能は純正レンズを前提に作られます。たとえばソニーα1の最高約30コマ/秒の連写は、対応する純正レンズでしか使えません。それ以外のレンズではコマ速が抑えられます。サードパーティ製は、こうした新機能への対応が遅れたり、対応しなかったりします。新興メーカーの製品はモデルごとの出来の差が大きく、AFの駆動音や動画でのピントの動きの滑らかさにもばらつきがあります。

手ブレ補正とボディ内補正の連携

ボディ内手ブレ補正は、センサーを動かしてブレを打ち消す機構です。これはどのメーカーのレンズでも働きます。差が出るのは、レンズ側にも補正機構がある場合です。メーカー各社は、ボディとレンズの補正を連動させて効果を高める仕組みを用意しています。キヤノンの協調制御IS、ニコンのシンクロVR、パナソニックのDual I.S. 2、OM SYSTEMのシンクロ手ぶれ補正などです。これらは基本的に自社の対応レンズでしか働きません。

サードパーティ製の補正付きレンズは、組み合わせによって補正の分担や効果が変わります。公表される補正段数も、純正の連動時より控えめになりがちです。広角から標準の短いレンズならボディ内補正で足りることが多く、差が問題になるのは主に望遠です。

収差補正データへの対応

ミラーレス用レンズの多くは、カメラ内やRAW現像ソフトでの補正を前提に設計されています。補正の対象は歪曲収差(直線が曲がって写る現象)、周辺光量落ち、倍率色収差(輪郭に出る色ずれ)です。純正レンズは、カメラ内補正と主要な現像ソフトの補正プロファイルにほぼ確実に対応しています。シグマやタムロンの現行品もカメラ内補正に対応する例が増えました。ただし、どこまで対応するかはボディとの組み合わせで変わります。新興メーカーの製品は、カメラ内補正に対応していないことがあります。現像ソフトのプロファイル追加が遅れることもあります。JPEGをそのまま使う人ほど、事前の確認が欠かせません。

ファームウェア更新と将来のボディでの互換性

純正レンズのファームウェアは、カメラ本体を通して更新できるものが多くあります。新しいボディへの対応もメーカーが責任を持ちます。サードパーティ製は更新方法がメーカーや製品ごとに違います。レンズのUSB端子、専用のUSBドック、カメラ本体経由などです。パソコン用の専用ソフトが必要な場合もあります。

より大きな注意点は、これから発売されるボディでの動作が保証されないことです。サードパーティ製は、新しいボディで不具合が見つかってから、ファームウェアで対応するのが一般的な流れです。古いモデルや、事業を縮小したメーカーの製品では、更新が出ないまま一部の機能が使えなくなることもあります。

価格とリセール

焦点距離と明るさが同じクラスなら、サードパーティ製は純正より安いことが多いです。中国系新興メーカーはさらに安い傾向があります。価格は時期や販売店で大きく変わるため、執筆時点の傾向として受け取り、実際の金額は販売店で確認してください。

中古で売るときの価格(リセール)は、純正のほうが下がりにくい傾向です。サードパーティ製はもともとの新品価格が低く、後継モデルが出ると相場が下がりやすいためです。新興メーカーの製品は中古の流通量が少なく、買取価格がつきにくい場合もあります。買った額から売った額を引いて考えると、実際の負担の差は新品価格の差より小さくなることがあります。

修理・サポート体制

純正はカメラと同じ窓口で修理を受けられます。ボディとレンズのどちらに原因があるかを切り分けやすいのも利点です。シグマとタムロンは国内に自社のサポート窓口があり、修理体制も整っています。シグマは一部製品で、有償でマウントを交換するサービスも行っています。サムヤンや中国系新興メーカーは、国内の輸入代理店が窓口になることが多いです。修理にかかる日数や部品の保有期間は代理店によって違います。並行輸入品は国内サポートの対象外になる場合があるので、どこで買うかも確認してください。

観点純正サードパーティ製
AF・連写ボディの全機能を使える最高コマ速や新機能に制限が出ることがある
手ブレ補正ボディとの連動に対応連動は限定的で、効果は組み合わせ次第
収差補正カメラ内・現像ソフトともほぼ対応メーカーや製品によって差が大きい
将来の互換性メーカーが責任を持って対応不具合が出てから後追いで対応
価格・リセール高価だが値崩れしにくい安価だが相場が下がりやすい
サポートカメラと同じ窓口メーカーや代理店によって差がある

マウントごとのサードパーティ製レンズの多さ

選択肢が最も多いのはソニーEマウントです。ソニーがマウントの仕様を他社に開示しているため、シグマ、タムロン、サムヤン、新興メーカーのAFレンズが幅広くそろっています。富士フイルムXマウントも、シグマ、タムロン、ビルトロックスなどのAFレンズが増えています。Lマウントでは、シグマ自身がLマウントアライアンスの一員です。そのため、シグマのレンズは純正に近い扱いで選べます。マイクロフォーサーズは、OM SYSTEMとパナソニックのレンズを相互に使えるのが特徴です。ただし、手ブレ補正の連動などは同じメーカーどうしの組み合わせに限られます。

ニコンZマウントにもタムロン、シグマ、ビルトロックスなどのAFレンズがありますが、Eマウントより選択肢は少なめです。キヤノンRFマウントでは2024年からシグマとタムロンのAPS-C用レンズが出ています。それでも執筆時点では、フルサイズ用のサードパーティ製AFレンズは少数です。

装着でつまずきやすい点も確認しておきます。同じ名前のレンズでも、マウントごとに別の製品です。Eマウント用はZマウントのボディには付きません。購入時はマウントの表記を必ず確かめてください。一眼レフ用のEFマウントレンズをマウントアダプター経由でミラーレスに付ける方法もあります。ただし、サードパーティ製EFレンズとアダプターの組み合わせは、カメラメーカーの動作保証の対象外です。AFが遅くなったり、一部の機能が使えなくなったりすることがあります。また、フルサイズ機にAPS-C用レンズを付けると、多くの機種で自動的にクロップされます。クロップとは画面の中央だけを使う動作で、記録される画素数が減ります。

用途とマウント別の選び方

動体撮影(スポーツ・野鳥・鉄道など)

最高コマ速や最新のAF機能を使うなら純正を選んでください。テレコンバーター(焦点距離を伸ばす補助レンズ)は、同じメーカーの対応レンズとしか組み合わせられないことが多い点も確認が必要です。ボディの最高速が要らない撮り方なら、Eマウントや Xマウントのシグマやタムロンの超望遠ズームで価格差を取る選び方も成り立ちます。

動画

ブリージング補正(ピント移動で画角が変わる現象を抑える機能)などの動画向け機能は、主に純正レンズが対象です。この機能を使うなら純正が有利です。一方、手動でピントを合わせるシネマレンズは、サムヤンや中国系メーカーに安価な選択肢が多くあります。ピントの動きを細かく作り込みたい人には、サードパーティ製が強みを持つ分野です。

旅行スナップ

重視すべきは重さと、カメラ内補正に対応しているかです。タムロンの高倍率ズームやシグマの小型単焦点は、純正の同クラスより軽いか安い場合があります。JPEGをそのまま使うなら、カメラ内補正に対応していることを確認してから選んでください。

予算重視

中国系新興メーカーの単焦点は価格面で魅力があります。ただし、補正への対応、ファームウェアの更新方法、国内代理店の有無を確認してください。純正の中古品も、リセールを考えると有力な選択肢です。

マウント別の目安

Eマウント、Xマウント、Lマウントでは、レンズごとに純正とサードパーティ製を比べて選べます。マイクロフォーサーズでは、まず2社の純正どうしで比べるのが近道です。ZマウントとRFマウントは純正を基本にします。そのうえで、サードパーティ製はネイティブ対応品(アダプターなしで装着できる製品)がある範囲で検討してください。

購入前に確認すること

買う前に、レンズメーカーの公式サイトで3点を確認してください。1点目は対応ボディの一覧と、注意事項に書かれた機能制限です。2点目はカメラ内収差補正への対応です。3点目は購入する販売店と保証窓口です。この3点に問題がなく、使い方がボディの最高性能を必要としないなら、サードパーティ製で予算を有効に使えます。どれかに不安が残る場合や、連写と手ブレ補正の連動を使い切りたい場合は、純正を選んでください。